研究について


私は、重力波で観測された重いブラックホールの形成過程及び起源に関する理論研究を行っています。以下、具体的に説明をしていきます。

2015年9月14日に人類で初めて、一般相対性理論から予言される重力波と呼ばれる時空のさざなみが検出されました。この重力波は、太陽質量の36倍と29倍の連星ブラックホールが合体した時のものでした。その後も続々と太陽質量の30倍以上の質量を持つ連星ブラックホールからの重力波が報告されています。しかしながら初めて検出された重力波源である連星ブラックホールも含め、これまで報告されている重力波源である連星ブラックホールの形成過程・起源は明らかにされておらず宇宙物理学の課題となっています。

それは、上記で示したような太陽質量の30倍を持つブラックホール、または、それ以上の質量を持つブラックホールは通常の星の進化によって形成されないと考えられているためです。そのため、現在ではこのようなブラックホールの形成過程として、

・「宇宙初期の金属量がゼロの環境で形成された星(初代星(popⅢ))が重力崩壊してブラックホールになった説」

・「宇宙初期の低金属環境で形成された星(popⅡ星)が重力崩壊してブラックホールになった説」

・「宇宙誕生の頃に密度揺らぎが持つ自己重力によって形成されたと考えられている原始ブラックホールの説」

・「球状星団などの星団内で、ブラックホールが合体しながら形成される動的形成の説」

の4つが提唱されていますが、まだ決着がつけられていません。

そのため私は、この説に決着をつけるため、上記で述べた4つの説のブラックホールの質量分布と有効スピンと呼ばれる連星ブラックホールの軌道角運動量を射影した物理量を用いて、1年間重力波観測した場合にそれぞれ上記の4つの説で形成されたとする連星ブラックホールが何個検出できるかをシミュレーションを用いて研究を行っています。


研究キーワード:重力波、ブラックホール、信号対雑音比(Signal-noise-to-ratio)、重力波検出器